フレンドリスト 「キホとカンナと本命」

14/18
前へ
/400ページ
次へ
「あんなこと言って、諦められなくなりますよ」 後ろから声をかけられながら、適当にスーパーの中に足を踏み入れた。目当てのものは決まっている。 俺の買い物はいつも目当てのものが決まっているからさっさと終わるはずが、今日は恐ろしいくらいに時間を要していた。 女と外出すると、こうも時間がかかるのか。 どうでもいいことを思っていた俺は、キホの言葉に返す声もなく、適当に相槌を打っては目当てのゼリーを発見してレジに向かった。 あれこれと言われながら、自分の中に根付いていた違和感が浮き彫りになって行く。 レジで金を出しながら、眉を寄せて俺の腕を引いている女を見つめた。そこには不機嫌そうな顔のキホがいる。 俺が思っていた以上に、この女はあれこれと思うことのある女のようだ。 猫をかぶっていたというのが、一番しっくりくるかもしれない。素の自分を曝け出されているということは、少なからず俺を慕っているのかもしれない。 「キホ」 「はい」 荷物を持ち直して、後ろを振り返った。 今日一日、出逢ってからほとんどの時間をこいつは俺の後ろで過ごしている。特に生産性のない時間を、だ。 そのことに、こいつは気づいているのだろうか。
/400ページ

最初のコメントを投稿しよう!

794人が本棚に入れています
本棚に追加