フレンドリスト 「キホとカンナと本命」

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「お前さ、別に俺の事好きでも何でもねえんだろ。なんでこんなまどろっこしいことしてんの」 決定的に吐き出して、べらべらと喋っていたキホの言葉が途切れた。はじめから感じていた違和感を声に出して、何の返答もないキホに、ため息を殺す。 こいつなりに、俺を好きでいるふりをするメリットがあるのだと思っていた。それにしてもあまりにも非生産的すぎる。 「何言ってるんですか。好きですよ……。突然変なこと言うのやめてください」 「へえ」 問うておいて、正しい返答が来ないことがどうでも良くなっていた。 何か事情を持っているだろうことくらいわかる。俺はそれに利用されているのだろう。 スーパーから出ると、外はどことなく冷えていた。 もう秋だ。その先には冬がある。朝佳は冬の間、あの白い足を外気に晒すのだろうか。それを考えただけで胸糞が悪かった。 「別に、言いたくねえならいい」 呟きながら、今日最後になる任務を遂行すべく足を動かした。 俯くキホが後ろからついてきているのを確認しながら、人通りの多い道に入って行く。その瞬間にはぐれそうになったキホの腕を掴んで引き寄せた。 他意はない。悪意もない。下心も全くない。 何の感情もなく引き寄せて、キホがごく普通に顔を赤らめたのを見た。それが羞恥なのか、好意なのか、わからないが、俺に対する特別な好意であるとはどうしても思えなかった。 直感のようなものなのかもしれない。
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