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“春哉の分も書いとく?”
デキの良い男は違う。そう思いながら“朝佳の分も出席書いといて”とメッセージを打って、しばらく返事のない画面に笑った。
ややしばらくあってから、“今度詳しく聞く”と送られてくる。チラと見てから、スマホをテーブルの上に置いた。
詳しく聞かれたところで藤が思うような関係にはなっていないが、まあいいだろう。
立ち上がって、寝室のドアを開けた。その先に視線をやれば、ついさっき俺に懺悔をぶつけてきた女が眠っていた。
苦しそうな息を吸っては吐いて、眉間にしわを寄せている。
どうも病状が悪化しているらしい。
食事もとらずに働き、泥のように眠っているだけなのだから、快方に向かうわけもない。
本当に、俺の軽傷を気にするくらいなら、自分の体を労ってほしい。見ているこっちが心配になる。
赤くなった頬を見つめながら、ゆっくりと朝佳の額に触れる。それだけで、朝佳の睫が揺れた。
「は、る」
「喋んな」
喉が酷く枯れているらしく、俺の名を途中まで呼んでは咳払いを打った。
病状が急速に悪化している気がする。瞼を持ち上げているのも辛そうに目を瞑る姿は、どうにも俺の精神を揺さぶっていた。
「今日もバイトあんの?」
俺が問いかけると、遠慮がちに首を縦に振った。
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