フレンドリスト 「間宮朝佳と38度7分」

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紙袋に腕を突っ込むと、想像していたものとは違う感触がした。 不審に思いながら袋から出して、それが、あの店でディスプレイされていたミリタリーブルゾンだと気が付いた。 なぜここに、と思うが、こんなことをできるのはカンナしかいない。妙に大きな袋に入れられたのはこのためだったのかと感心してしまった。 どうやら勝手に買わされていたらしい。 俺がこのブルゾンに惹かれていたことに気付いていたのだろう。特に文句を言う気にもなれずに再び紙袋の中へと戻して、今度こそ朝佳に買ったルームウェアを取り出した。 取り出して、訝しげな顔をしている朝佳に投げると、反射のように朝佳がキャッチした。「ナイスキャッチ」と言うとまた神妙そうな顔をされて思わず苦笑する。 「何これ」 「見りゃわかるだろ、服だよ」 「そうじゃなくて」 「あ? コットン100%のお肌に優しいルームウェアですよ?」 「だから、そうじゃなくて、何でこんなのがあるのって」 「俺が妖精見習いだから? 魔法使って生みだしたのかも」 「ちょっと、頭痛いからふざけないで」 額に冷却ジェルシートを貼った朝佳がまた不快そうな顔をしている。わざと茶化している俺に気が付いているのだろうが、俺も引く気はない。
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