フレンドリスト 「間宮朝佳と38度7分」

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花柄ばかりを身に纏っている朝佳が無地の服を着ている姿を見るのは、違和感がある。 簡単かつ単純に、ただ思考に浮かんだ言葉を吐くと、視線を逸らされてしまった。 それは恥ずかしがっているというよりも、俺の発言を本気と捉えていないような仕草だった。 本当に似合うと思って口に出したのだが、致し方ない。この反応には慣れている。いつもの事だ。 「腹減った?」 「全然。まず、動いてないから」 「動いてなくても食え」 親のように言って、ついさっき購入したゼリーを差し出した。 「これなら食えんだろ」 これだけで食べたことになるのかどうかはさておき、何も口に入れないよりはマシだろう。面倒そうな顔をした朝佳の目の前に突き出して、手渡した。 朝佳をソファに座らせて、キッチンに足を踏み入れる。冷蔵庫を開けて、昨日購入したままになっていたスポーツドリンクと、引き出しから市販薬を取り出して、掴んだ。 「朝佳、これ飲んどけ」 ゼリーのふたを剥がしている朝佳に、横から差し出しながら呟いた。 至れり尽くせりの俺に、朝佳は面倒そうな顔をしている。もう抵抗しても無駄だと悟ったのか、反論されることはなかった。 「ありがとう」 丁寧に発音した朝佳は、言葉とは真逆に眉を潜めている。 何がそんなに気に食わないのか。大方俺に借りを作っている今の状況なのだろうが、俺は気が付かないふりを続行している。
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