フレンドリスト 「間宮朝佳と38度7分」

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国民的人気バンドがチャリティイベントとして児童養護施設に出向き、ライブを行ったというニュースだ。その国民的人気バンドというのが、ちょうど今日、藤と話していたバンドであることを思い出した。 そもそも国民的という称号は、実際の国民のうち、何パーセントに認められていると付けられるのだろう。 そのバンドが国民的でない頃から知っていたファンからすると、取ってつけられた様な称号に思えるのも無理はない。 ゆっくりと咀嚼していた朝佳をちらりと見ると、朝佳も俺と同じようにニュースに気を取られているようだった。 食べることをやめて見つめている朝佳は、俺が想像する以上にそのニュースに気を取られている。それを見て、朝佳がバンド好きらしかったことを今更のように思い出していた。 「朝佳、このバンド好きなのか」 「え? ああ、まあ、すきかな」 「へえ」 「今はあんまり詳しくないけど。まだインディーズの頃とか、良く聴いてた」 「ああ、俺もそんな感じだわ」 ヴォーカルが人好きのする顔で子どもと触れあっている映像が永遠と流れている。もはや、ライブと言うよりも、子どもと遊んでいる芸能人だ。 俺が知るヴォーカルは、常に歌っていたから、こうして普通に行動しているところを見るのは新鮮だった。 朝佳も同じことを思っているのだろうか。 ニュースが終わるころまで、じっとテレビに視線を奪われていた。
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