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「俺が勘違いしてほしいのはあいつじゃなくて、お前なんだけど」
「だから……」
「つーかそれが勘違いじゃなくて、自分の思ってる通りだとは思えねえの? 俺がここにいてほしいからここまで引き込んで、帰って欲しくねえから引き留めてて、それが全部、お前にだけだとは、思ってくれねえの? そっちの方向で勘違いしてほしいんですけど。なあ?」
言い切って、どこまでも気色の悪い言葉に自嘲しそうになる。とんでもなく告白めいている。
ほとんど俺の中に渦巻いている感情が何であるか吐露しているようなものだった。それでもここまで言わなければ、こいつには伝わらない気がする。
格好のつかないままの自分になって、その瞳を覗き込んだ。
朝佳の瞳の中に、やはり余裕のなさそうな自分の顔が浮かんでいる。
散々だ。こいつの前で、俺は何度でも最低を更新できる。
「意味わかんない」
困惑したような顔の朝佳が呟いた。その言葉にさえ困惑が浮かんでいる。
俺の一世一代の告白は、意味がわからないで完結された。
笑える。
俺の感情は意味がわからないそうだ。確かにそうかもしれない。俺も酷く持て余している。
「わかんなくていいから、ここにいろよ」
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