フレンドリスト 「間宮朝佳と38度7分」

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わざわざ変えるのも面倒でそれを着る。ついでに下もスエットに履き替えて、残骸になった服をチェストの横にあるかごの中へと放り込んだ。 これで明日来た業者が綺麗さっぱりクリーニングしてくれる。それにかかっている費用は、俺には無関係だった。 着替えを終えて、次に、丁寧に畳まれている毛布を取り出した。 踵を返してリビングに戻ると、朝佳が振り返る。その顔は、いつも俺を呆れていた。 「お手洗いじゃなかったの」 「ベッドに巻き散らかした」 「ありえない」 ふざけた回答を放り投げると、朝佳が笑う。 たまに笑うから、常に不意打ちで胸に突き刺さる。無自覚の策士に勝手にやられてしまった。 隣まで歩いて、手に持っていた毛布を朝佳に渡した。今すぐベッドで寝てほしいくらいだが、これくらいで譲歩することにする。 「使っとけ」 「ありがとう」 俺が発言して、ややあってから礼を言われる。それに「どういたしまして」と返して、当たり前のように朝佳の横に深く腰掛けた。 座りながら、かごに入れたパンツのポケットに、煙草とライターを入れっぱなしにしていると気が付いた。 取りに行くのも億劫だ。 考えているうちに、膝に何かがかかる。それを確認するために視線をテレビから下に落として、心臓が潰れた。 「春哉も、使って」
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