フレンドリスト 「間宮朝佳と38度7分」

22/30
前へ
/400ページ
次へ
映画が進行して行く。 画面を見つめながら、一定間隔で朝佳を確認していた。まだ眠るつもりのないらしい朝佳と一瞬目が合って、「まだ起きてんの」と呟いた。 「そっちこそ」 「こんな感動的な映画で眠れない」 「嘘吐き。さっきからこっちばっかり見てるくせに」 「すげえ、自信」 呟きながら、図星で思わず苦笑した。 「だって目が合うから」と囁かれて、視界に星が舞った。一方的な視線では目は合わない。それを朝佳はわかっているのだろうか。 「なに、朝佳ちゃんもこっち見てんじゃん」 茶化して呟いて、朝佳が視線を逸らしたのが見えた。俺もそれに倣うように、もう何度も見た映画に視線を集中させる。 話しかけない方が眠りに落ちやすい。 確認するのをやめようかと思って、足を組み直すと「ねえ」と少し高い声が右耳に突き刺さった。 少し前に見るのをやめようと思っていたくせに、現金にも横を振り向いていた。朝佳はこちらに視線を寄越さずに俺に話しかけている。
/400ページ

最初のコメントを投稿しよう!

793人が本棚に入れています
本棚に追加