チャンネルリスト 「拒絶」

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いきなり意気投合したらしい二人が肩を組んでこちらを見つめてくる。酷い扱いを受けているのは俺じゃなかろうかと思うが、それよりももう一度確認しようと口を開いた。 「俺帰っていいか」 「いやダメでしょ」 二方向から同じ言葉を吐かれて黙る。ここから逃げることは、やはり難しそうだ。 相変わらずケントを吸っている謙太郎に会うのはそれこそ久しぶりだ。いまだに女と修羅場を繰り返しているらしい謙太郎の頬は赤く腫れていた。 また誰かの平手打ちを食らったらしい。 突っ込むのも面倒で、とりあえずアメスピを取り出した。慎之介に最後会って以来、2本しか減っていない。己のコスパの良さを感じつつ、久方ぶりに火を点けた。 煙を燻らせて、ゆっくりと吸い込むと、神経物質が興奮を覚えているような気がする。 どことなくさっぱりした、クリアな視界になったように錯覚しながら、目の前で小競り合いを繰り返している男たちをぼんやりと見つめた。 面倒くさい。 慎之介がどうして俺をこの喫煙所に誘ったのかは、知っている。ここに来たらまず詰問されることを想定していたが、予想外の男に慎之介も言葉を慎んでいるようだ。 案外プライバシーを気にする男らしい。この男は、最低限の慎みを持っているらしい。慎之介という名前はあながち間違いでもないのかもしれない。 謙太郎とは違って。
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