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綾子先生は職員室のデスクでテストの採点を行っていると、学年主任の男性教諭が話しかけてきた。
「夏目先生。部活の顧問の件は決まりましたか?」
「えっと…… すみません。色々と悩んでいましてまだ決めていないんです」
「そうですか。一応全職員が部活の顧問をお願いする決まりになりましたので出来れば早く決めていただきたいのですが、もし良ければ吹奏楽部か文芸部の顧問をお願いできればと思います」
「そうですか…… 近いうちに考えて書類を提出します」
男性教諭はA4用紙を綾子先生に渡すと自分の席に戻った。だがどこか寂し気な表情を浮かべながら一度、「吹奏」と鉛筆で書き出すとピタリと手を止めて机の引き出しにしまうと職員室を出て行った。
この時亜希先輩と大輝先輩は、一年時の担任でもあり30代の男性教諭の元を訪れていた。亜希先輩の担任の先生は責任感と使命感が強い方で白羽の矢が立った。
トントン
「失礼します」
「おお、塚本と山川。部活頑張っているみたいだな。どうしたんだ?」
机に座って作業する先生は笑顔で迎えてくれるが2人の表情に笑顔はなかった。
「先生。お願いがあります。演劇部がピンチなんです。是非顧問になっていただけないでしょうか?」
2人は深々と頭を下げてお願いをするが……
「悪い。チョットこれから出かけないといけない用事があるんだ」
焦りを隠すように急いで机の上にある小物を鞄に慌てて詰めると足早に立ち去ろうとした先生の腕を亜希先輩は涙を浮かべながら掴んだ。
「お願いします。このままじゃ演劇部が廃部になってしまうんです。先生が頼りなんです」
「悪いが先生はお前たちの力になってやれない…… すまない」
先生は唇を噛みしめながら俯きながら社会科準備室を後にしようとすると
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