第4話 誘惑の毒蜘蛛《タランチュラ》

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「だ、誰かいましたか?」 「いや……梓ちゃん。俺がここに居たことは黙っていてくれ。俺も「最後の賭け」ってやつに期待するしかねえな……」 大輝先輩はポケットに手を入れながら猫背で歩いて去ってしまうと解放感から心に安心感が生まれた。でもいつも以上に冷静でクールな大輝先輩の様子の意味を知ることはそう遠くなかった…… その後、皆が部室に揃うと何故だか無言で部室を片付けていた。ため息とすすり泣く声が聞こえる中、悲しみに包まれた空気は辛い。 「あれ? この前ここにしまったアルバムが無いよ」 美咲は本棚を何度も探したがアルバムが見当たらなかった。でもこの時、ボク達は特に気にも留められる状況じゃなかった。 「とりあえず、明日の放課後、部室へ来るわ…… 大丈夫よ。もし廃部になってもまた皆で集まろう。それじゃ」 亜希先輩は手を振って足早に帰ってしまった。ボクのせいで皆に迷惑をかけてしまったんだ。 「ボクのせいだ…… 廃部になったら大会に出られない」 プルルルル ボクの携帯(スマホ)の着信が鳴ると茜先輩からの着信が表示されていた。心臓に冷や水を浴びた感覚のボクは先輩への不信感を抑えながら、夕日に視界を遮られるのを手で遮りながら校庭に出ると急いで電話を取った。
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