第5話 託された夢

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私は部室で見つけた思い出のアルバムに零れた涙をなぞりながら何度も春香に問いていたわ。 「春香…… 今日、部室に行ったのよ…… あなたの大切な美咲ちゃんが泣いている姿を見たら何も言えないわ…… でも私が戻ったらまた不幸させちゃうんじゃないかな……」 青春を謳歌していた私たちの満面の笑みが写された写真に問いかけたわ。 あんなことが起きなければ…… 私と春香との出会いは高校1年の時に同じクラスになった事だった。私って結構昔は人見知りが激しかったんだ。ある日の英語の授業で私は教科書を忘れてしまったのよね。 「ヤバい…… あの先生怖いんだよね」 私が俯きながら「どうか指されませんように」と心で念じていた時だったわ…… 「良かったら教科書一緒に見よう」 春香はウインクしながら私に見せてくれたわ。それをきっかけに私たちは休み時間も一緒に行動するようになったわ。そして部活の見学会の時も 「夏目さんも良かったら一緒に演劇部に見学いかない?」 「でも私は目立つの苦手だから……」 「大丈夫だよ。きっと夏目さんは好きになると思うよ」 満面の笑みで私の手を引かれて演劇部の見学に付き合わされたわ。でも演劇って舞台に立つ人だけじゃないんだよね。春香は児童劇団出身で中学時代も演劇強豪校からウチの学校へ入学してきたし。おまけに有名な劇団からもオファーが来るほどだったわ。
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