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「翌日の心配をする必要がないから、これからは思う存分飲むぞ」
仕事を引退した途端そんなことを言うもんですから、翌日のことよりあなたの身体を心配に思いました。
でも、お酒を飲む量はむしろ減りましたね。
いつでもどれだけでも飲めるとなると、むしろ飲まなくなるものね。
それとも、口には出さないだけで、健康のこと気にしていたのでしょうか。
重い一升瓶を買う頻度が減ったので助かりました。
そう思ったことは内緒です。
そういえば、寝ることも同じでしたね。
「これからはたくさん寝るぞ」
って言ってたのに、仕事をしていたころより早起きになりましたよね。
それなのに、ある日あなたは本当にゆっくり寝てました。
お昼前、私がカーテンと窓を開けると、夏の日射しと暑い空気が入ってきました。
「あなた、そろそろお昼ですよ」
そう呼んでもあなたは起きない。
あなたを揺すると、ふわりとシャンプーの香りがしました。
けれどあなたは目覚めませんでした。
あんなに暑いのに
あなたは冷たくなっていました
シャンプーの香りを残して
お風呂に入り、頭を洗おうと思ったら気づきました。
もう何年も詰め替えで使い続けたシャンプーとリンス。
古ぼけた容器に出来た穴から、シャンプーが流れ出していたんです。
流れ出すシャンプーを見ていたら涙が溢れました。
あれから5年
リンスの容器に
まだ穴は空きません
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