お仕事⑥「ケーキ屋・由野くん」

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お仕事⑥「ケーキ屋・由野くん」

僕は小さな町で小さなケーキ屋をやっている。 図体のデカイ僕が小さなお店をやっているのが なんか面白いらしく、 女子高生が「ウケる〜」とか言いながら 携帯でよく写真を撮っていく。(失敬な) 確かにちっちゃな店内で背を丸めるようにして ラブリーなケーキを作るメガネ男子は 漫画みたいに見えても仕方ないか…(トホホ) それでも僕はこの仕事が大好きで 小さいながらも自分の店が大好きで ケーキを買いに来てくれるお客さんたちが 大好きだった。 高校生たちのインスタのおかげで 店は特に午後になると 若い子たちでいつも賑わっていた。 午後の時間にはケーキの材料で余ったいちごや カスタードクリームなどを使って 小さなクレープを作ったりもしたから、 これがまた彼女たちにバカ受けして、 午後3時以降はクレープ屋と化していた。 「由野くん、今日のクレープのフルーツはなあに?」 3度のご飯よりスイーツが大好きと豪語する 常連さんの高校生・たまきちゃんが聞いてきた。 「今日はバナナと…後はいちごとマロンかな」 「じゃあさ、バナナでチョコソース トッピングして、由野くん!」 「了解。ちょっと待っててね」 「あ、あたしも〜由野くん!!」 たまきちゃんの隣で友達のぽっちゃり高校生の なぎさちゃんが声を上げる。 「ちょっと、なぎさ!あんた今日からダイエット するんじゃなかったのお??」 「明日からにする。えへへ」 「そんなんじゃ間に合わないよ!!」 「何に間に合わないの?」 「あ、来月うちらの高校で学園祭があってさ…」 「告白…するの!内野くんに!きゃっ」 顔を赤くして笑うなぎさちゃん。 「ダイエットして、キレイになって告白するって 言ってたのに〜」 「明日からホントに頑張るからあ…」 お願い!とばかりに手を合わせるなぎさちゃんは 憎めないキャラクターだ。 そっか…じゃあ… 僕は思いついて、たまきちゃんには通常の ホイップクリームにバナナ・チョコソースで クレープを作り、なぎさちゃんには 別のクリームでクレープを作った。 クレープを頬張ったなぎさちゃんは 「あれ…いつもと違う味だ!なんか爽やかな 味がするよ…」 「そのクレープはヨーグルトクリームで 作ったんだ。通常のホイップクリームより カロリーが抑えめだから…」 「ありがとう!!由野くん!!!」 満面の笑みを浮かべるなぎさちゃん(笑) 君のその笑顔、僕は大好きですよ〜… 「えっ!ちょっと味見させて、なぎさ!!」 驚いたたまきちゃんが横からなぎさちゃんの クレープに噛みつく。 「美味しい!!由野くん、天才!!!」 「どうも…(照)」 「これ、絶対売れるよ!メニューに入れようよ」 「そうかな…?ありがとう」 「ねえ、なぎさ!うちらでこのクレープの 名前考えようよ」 「あ、いいね!由野くん、いい?」 「いいよ。楽しみにしてる」 「やった〜!!」 2人の常連さん女子高生たちが クレープを食べながら名前を考えてくれた。 なんか楽しそうだな(笑) そして出来上がった名前は… 『これなら罪にならない! メガネ男子・由野くんのダイエットクレープ』 「ぼ、僕の名前いるの?(焦)」 「当然じゃーん!由野くんが考え出した クレープだもん。ね〜!!」 罪って…(苦笑) でもお店の窓にPOPまで貼ってくれたし、 これで行くか…。 ところが、その翌日… 朝からダイエットクレープを買いに来る お客さんが絶えない。 午後からにしていたクレープを朝から 作るハメになり、僕は仰天した。 午前中でクレープは売り切れてしまい、 ヨーグルトクリームもなくなって ヨーグルトを使ったケーキまで売り切れてしまった。 いったい、どうなってるんだ…??? 他のケーキもほとんど出てしまい、 僕は早々と店を閉めるしかなかった。 午後一番で来てくれたのにケーキもクレープも 買えなかったお客さんに謝りながら、 「あの、クレープのことはどこで…?」と聞くと 「twitterでバズってますよ、このお店」 「ば、バズる…??」 「高校生のインフルエンサーのコが載せたから。 ね〜」 お客さんの手元の携帯には 満面の笑みのなぎさちゃんの写真が… !!!! なぎさちゃん、インフルエンサーだったんだ…(驚) 恐るべし、SNS…。 twitterも見ない僕には未知の世界だが、 さすがにこれだけお客さんが来てしまうと、 常連の高校生さんたちが食べられない…。 対策を考えないと。 そこで、いつもの時間にやってきたたまきちゃん となぎさちゃんにお願いをした。 「えっ!!売り切れ!?ショック〜」と嘆く 2人に、お礼のおからクッキーをあげながら (これもダイエットスイーツだ) 「あのね、ダイエットクレープは 週2回で午後からの販売にしようと思うんだ。」 「うんうん…」 「僕もお店のホームページに載せるから、 なぎさちゃんにもお願いしていいかな?」 「いいよ!任せといて〜」 こうして、ダイエットクレープは すっかり僕の店の定番になり… 2年の月日が流れた。 「由野く〜ん、本日のおすすめクレープは?」 「今日はチーズケーキ入り、かな」 「了解!看板書くね!」 お店は少し大きくなり、 なんとなぎさちゃんがうちのスタッフ、 たまきちゃんがアルバイトに来てくれるように なっていた。 美大に通うたまきちゃんは 黒板アートが大の得意で、うちの看板以外に ネットで注文がきてしまうほどの作家さんでも ある。(うちの看板は無料で書いてくれる) スイーツ好きから製菓学校に進んだなぎさちゃんは メニュー開発と広報担当でもある。 いろいろ考えたダイエットスイーツで 自分もすっかりスリムになり… 「なぎさ、お疲れ〜」 「あ、内野くん!ちょっと待っててね」 見事あの内野くんをゲットしたのだった…。 
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