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〜律くんのパパは語る〜
律くんは恐ろしい位、優秀なΩだ。
律くんはαの勝男君とΩの僕の間に三番目に生まれた子だった。
勝男君は凄く優秀なαだし、僕はモデルや俳優をする位には容姿が良かった。さらに僕達は『運命の番』だったから長男、次男、四男とも優秀なαなのは想定内だ。Ωの子が生まれてくるのだって想定はしていた。だが、僕だって自分が天使を生むとは思ってもみなかった。
ちなみにうちのαの子供達の初恋の相手はみな律くんだ。
もうね、お腹から出てきた途端に天使だってみんな感動したよ。四男なんて生まれたその日から律くん至上主義だった。
律くんは自分をジミだと思い込んでいるが、真っ白なツヤツヤお肌にあのくりくりの澄んだ黒い瞳。毛先に少し癖のある柔らかい黒髪。媚びのない清楚な美しさは誰も彼もが美しいと平等に認識出来る子だった。
あんまりにも可愛すぎて、思わず男の子なのに女の子用の服を着せて育ててしまったのに、それを誰も訂正しない位に可愛すぎた。
僕の仕事復帰を期に入れた保育園で、あの双子と出遭って、律くんは五歳位から自分が男の子と気がついて、女の子用の服を着なくなったけれど。
あの双子。
αの母親とΩの父親から生まれた双子。
ご両親は面識もあったし素晴らしい方なんだけど、見るからに将来はαだよねってわかったイケメンの双子は入園式の日、ちょこんとお座りする律くんに二人でハイハイで近寄ってきて律くんのぷにぷにほっぺにチュッチュしだした。
まぁまぁ可愛らしいって言っていられたのも最初のうちで。律のうなじを二人ががりで甘噛みしだしたときは両家の両親が真っ青になった。
あの双子と自分はお友達で、自分は平凡なβだと思い込んでいた律くんは何となく友達が行くならの勢いで中学受験してαと共学の中高一貫校に入ってしまって、そのままの勢いでαと共学の大学に行ってしまった。
そりゃ、学校が学校だし、みんなαの中でも更に優秀な子達の集まりだから本能のままに襲ったりしないってわかっているけどね。お行儀の良い狼の群れの中に子うさぎを放す恐怖といったら。
そもそも律くんは凄く優秀でお勉強だってそのへんのαより出来ちゃう子だった。
しかも!!
律くんは自分では音楽の才能も絵の才能も無いと思い込んでいる、け、れ、ど!!
初めて触った保育園の遊技室のオルガンで3歳の見た目天使な子がニコニコとバロック音楽演奏しちゃったらみんなびっくりでしょ?!天地創造しちゃうでしょ?
趣味で描いた油絵、小学に入った位から知り合いのおじさんが処分してくれていたと思っていたみたいだけど、それただのおじさんじゃないし、処分じゃない。知り合いの画商さんが買い付けていたんだからね?
幼いうちからαなんかに囲われなくても十分一生暮らしていける才覚が律くんにはあったから、それこそ律くんが憧れる『たった一人の運命の番』でも現れない限りは、肉体的に一人では辛い時期もあるから恋人位は居てもいいけど、律くんは番をつくらなくても良いんじゃないかと僕は思ってた。
思ってたけど、美しく才もあり学もあり、更にΩの律くんはもうね、狼達が狙いまくりだった。
僕の仕事関係の人間には絶対合わせなようにしてた。だって絶対スカウトされてデビューしてあっという間に知らぬαに攫われるのが目に見えるから。
そんな天使を保育園の頃から狙っていたあの双子。
なんとなくみんな『そうなのかな?』とは思ってたけど、
『律くんを守って?』
という魔法の言葉で誤魔化していた時期もありました。
でもね、でもね。
集団検査の結果はお家で見ましょうって学校の先生言ってたよね?言ってたのに、学校で見ちゃった律はそのままお持ち帰りされ、数日後、髪の生え際ギリギリのうなじに噛み跡を付けて帰ってきた。
しかも二つ。まさか本当にやると思わなかった。『運命の番』って一対一だよねっていう常識ひっくり返してきやがった。
将来的に牽制し合わせ、あわよくば共倒れと願っていたのに。
あぁ、せっかく守ってきた天使がぁぁぁと律を抱き締め号泣した僕に罪は無いと思う。
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