律くんは運命の番に憧れている

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律くんは運命の番に憧れている

 律はαの父とΩのパパから生まれたごくごく普通のβっぽいΩだ。 綺麗に二つずつ年の離れた四人兄弟の三番目でαの兄二人とαの弟が一人がいる。 みんな律と違って顔も性格もよく優秀なαらしいαだ。 だが律といえば、ごくごく普通のβっぽいΩだ。 Ωといえば男女とも、容姿が飛び抜けて美しかったり、強いαを惹きつける魅惑のフェロモンを放っていたり、芸術面に才能が開花したりと特記事項がある人が多い中、律は特に何もない。 黒髪黒目に黒縁眼鏡で勉強も芸術系も目立った才能なしと余りにジミ……いや、普通過ぎて、家族も自分も周りの人も皆が皆、中学入学時の学校での集団検査の結果を見るまでβだと思っていたぐらいだ。 せめてΩという個性だけでもあって良かったというべきか。パパなんて集団検査の結果を見て愕然とした後、俺を抱き締め号泣したくらいだから、本当に同じ家族かよと突っ込みたくなるくらい何もない。 なんと言うか、Ωなんだけど、これっていう魅力がない自分が律はちょっと悲しい。 家族写真の中の自分だけがいつもぼやけて見えてしまう。家族はみんなキラキラなのに。 周りに比べ少し身長の伸びが悪く筋肉の付きが悪いなとは思っていたが、それくらいだ。  クラスのΩっぽい子とか見ているともう、別の性別にしか思えない。なんであの子達は可愛いのに僕はこれなんだ。 ……と悩んだのも遠い昔。 今は完全に開き直っている。 「ねぇ、りぃつぅ〜。夕飯なんにする〜?」 大学の講義の帰り道、律の腕に悠太が飛び込んできた。 はい、これ普通のΩちゃんにやったら大怪我させるやつね。あうとー。 咄嗟に飛び落ちた眼鏡を拾い掛け直す。 「白菜残ってたから鍋にして、明日の朝は、おじやがいい」 「りょうか〜い」 「……お前ら、夫婦みたいな会話だな」 冷蔵庫の残り物を思い出して答えると右隣りを歩いていた同じ科の翔が一瞬驚いた顔をしたあと笑った。 「ずっと一緒に暮らしてるかなら」 左隣を歩いていた颯太が悠太にゲンコツをキメた後、律のワシワシと頭を撫でてくる。 はい。はい。僕は大型犬じゃないからねー。 ってまた眼鏡が落ちたので拾ってかける。 もう、傷がついちゃうよと見上げれば今度は悠太が颯太にゲンコツをキメていた。  あんまり二人の扱いが雑だから僕をみた翔が少しびっくりして、その後、にっこりと笑って僕の手をしっかり握ってくる。 「あ、大丈夫だよ?僕、丈夫だから怪我してないよ?」 「ねぇ、律。僕も一緒に暮らしたいな」 あ、これ、最近よく言われるやつ。 しかもなんか翔の目がギラギラしてる。 こいつ実はα?なんか嬉しい。 ちょっとは僕のことΩとして見てくれたってこと?期待しちゃう? ドキドキして翔を見つめてたら悠太が突っ込んできて、颯太が僕の後ろから抱き着いてきた。 そのまま悠太が翔の側に行ったら急に翔は用が出来たと走っていった。 最近みんな忙しいのか、こういうの凄く多い。悔しいなぁ。 あぁ、せっかく見つけた僕の出会いが去っていく〜。 さよなら、僕の青春〜。 また来てね〜。 仕方なく、後ろから抱き着いてきた颯太と前を跳ねる悠太と一緒に家に帰る。 颯太の言う通り、律は今、幼馴染の双子のαの悠太と颯太と一緒に暮らしている。 αとΩが一緒に暮らすって恋人?ってよく聞かれるけど、僕達は恋人じゃない。 どっちかっていうと家族枠だよね? 付き合いは保育園からだから長期休み以外はずっと一緒に居たと言っても過言じゃない。いや長期休みもうちに遊びに来てたからもう会わない日を数えた方が早い位、毎日会ってる。 仕事で留守がちな両親や家を出ていった兄達よりずっと一緒に居る。だから家族枠。 ちなみに颯太も悠太もキラキラ系α様だ。少し茶が交じるサラサラヘアーに綺麗な茶色味の強い瞳でファンタジーの王子様みたいな感じ。頭も良いし、性格もいいから女の子やΩの子達にモテモテで常に熱い視線を送られている。秋波って言うんだっけ? でも二人とも小さい頃から鈍いから女の子やΩの子達の視線に全然気が付いていない。 勿体ない。実に勿体ない。 僕にもそのパワーを分けて欲しい。 分けてください。お願いします。
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