一つの理想

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こちらには烏合の衆の如き集い そちらには有象無象の如き集い あちらには身勝手なる強欲なる飲んだくれた者らの如き集い そこかしこには玉石混合ならぬ木石混合とでもいう者らの如き集い 木と石が味気なく線や丸や三角となって ごちゃごちゃに長短入り混じり乱れ 書かれた図に色がてんでバラバラに塗りたくられ 到底まとまりえず調和がとれず箸にも棒にも掛からず愚にもつかず 花鳥風月は雲となって散り、霧となって消え失せた 日差し然り影然り雨然り植物然り小鳥然り皆台無しにする 長夜の夢を覚ます破壊が起きれば結構と思える それくらい目の毒 見るに忍びない 俗悪なこの街並 窓枠が額縁になって 身じろぎもせず 我、肖像画の如く 恋人へ一途に心寄せて想う 窓を通して見えるものは 同じく窓を通して我を一途に想う恋人のみであって欲しい 声は銀の如し 熱で蕩けるが如く甘く囁く 顔は花の如し なかんずく瞳は檜扇の実の如く黒く艶やか 唇は藪柑子の実の如く赤く艶やか 肌は雪晃木の実の如く白く艶やか 肉体は醜く退化した街とは裏腹に美しく進化した最先端を誇る女が家に居る その乳房は喩えようもなく麗しく豊満だ 腰の括れは千尋の谷のよう そこから盛り上がる尻は仙境の桃のように端正だ 手足はすらりと伸びやかな 黄金比を獲得した妖艶なる女 これ程までに完璧な悩ましく艶めかしいものが他にあるだろうか 発見しようと全宇宙探索したところで豆腐の角で頭を割ろうとするようなもの ギリシャ神話に登場する女神たちも羨むであろう目くるめく美貌 卑猥な心でなく高き美意識により惚れぼれする 奇を衒うでもなく豹柄の服に身を包んだ柔肌 バラの花びらを触るような肌触りがする それのみあれば同じ人なれど誰からも雀の涙程の理解もされない孤独な我は救われる 嗚呼、絶対守りたいと思わせる女 その美貌はガラスのように脆く損なわれる恐れあり いかがわしき外道の手に落ちる恐れあり よって折角の宝が台無しになる恐れあり そうさせじと想う心の強きこと激しきこと嵐の如し 今、一切俗世と関与せず逸脱し遁世した我 潔癖が露顕したるが如き白き部屋にて 至高たる堪能と賞玩に与り 刺激的なる官能を味わうこと切に夢見る これ矛盾の如くにして矛盾に非ず
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