腕時計を買いに

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「いただきまーす」  ほかほか炊きたてご飯に湯気の立ち上る味噌汁にだし巻き卵。智弥と付き合うようになって食生活が一変したなあ。どうしよう、俺、健康になっちゃう。 「そういえば、さっきのアレ何だったんだよ」 「アレ?」  味噌汁の具である玉ねぎとじゃがいもを口に運んでから首を傾げる。 「着替えてるとき、なんか考え込んでたろ」  緑茶の入った湯呑みを持ち上げながら智弥が俺を見てくる。――ああ、アレ。  大したことじゃないけどさ、と前置きしてから、 「やっぱり、腕時計ないと不便かなって」  山崎とお揃いの時計はさすがにもう出来なくて。かと言って、すでに腕時計で時間を確認するのが癖になっており、つい何もつけていない左手首を眼前にかざしてしまう。  ふーん、と興味ないような素振りだったのでもうこの話は終わったものと思っていたら、食後に洗い物をしている智弥が唐突に口を開いた。 「時計……買いに行くか? 一緒に」 「え」  一緒にお買い物……。それって、もしかして……デート?  俺、デート初めてなんだけど。え、マジで? 「……別に、嫌ならいいけど」  俺が固まって黙ったままなので、智弥は痺れを切らしたらしい。拗ねたような言い方に俺は慌てて、 「う、うん! 行く。行かせていただきますっ」
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