腕時計を買いに

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 ***  待ちあわせ場所は、駅を降りて裏口の……俺と智弥が初めて会った場所だった。銀杏の大木が足元にちょうどいい木陰を作ってくれている。濃い緑が目に和む。  去年の今頃何してたっけ。……山崎に結婚するって報告もらったのはものすごく暑い日だったのを覚えてる。ちょうど今日みたいな猛暑日。  ……初めて智弥に会ったときは真冬で。この木にも葉っぱは一枚もなくて。  一年経って、こんなことになってるなんて夢にも思わなかったなあ。 「――悪い、待たせたな」  午前中、ブランカで仕込み手伝ってくると言ってた智弥が早足で近づいてきた。 「ううん、全然」  なんかホントにカップルみたい。いや、俺たち付き合ってるんだから、それでいいのかな?  颯爽と歩き出した智弥がふり返って俺を見てくるので慌てて足を前に出す。  こうして並んで歩くと、やっぱり智弥って……カッコいい。  背もスラっと高くて。顔立ちも、鼻が高くて、ぱっと見日本人には見えないし。  涼し気な目元に、青みがかった灰色の瞳。  なのに実家でオリバーさんに英会話ビシバシやられてしどろもどろになってるときや、岳大さんと言い合いしてるときなんかは子どもっぽくて……可愛い。  俺が可愛いなんて言うと、智弥怒るかもだけど。  和鷹さんとはまだ二人で話すのは難しいみたいだけど、俺とかオリバーさんとかが一緒だと、一言二言、会話を交わすようになってきた。よかった、ホントによかった。  アルバムを見せてもらったけど、智弥、エマさんにそっくりだ。目の色だけ和鷹さん似で。  
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