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「智弥?」
――じゃあこいつが王子様?
……王子のキスで、眠り姫は目を覚ます――。
智弥はそっと手を伸ばした。
目が合う。ふっと逸らされるのをつい追いかけて頬に手を当てる。ほんのり赤く染まったその滑らかな感触に、身体の奥が疼いた。
「智弥……手、はなして……」
手のひらを重ねて外そうとするのを、力を込めて阻む。そのまま顔を寄せて、心の赴くままに、肉厚な唇を自分の唇で塞いだ。
「……っ」
吐息が重なり合う。少し離した唇が赤みを増し、さらに智弥を煽る。
「あ、智弥……待っ、」
何か言いかけた言葉ごと吸い上げて、後ろ髪をかき抱いて舌を絡める。
ん、と漏らした声に背筋が震えた。胸に置かれた拳がぎゅっと握られ、かすかな抵抗を示す。
抱き寄せた身体が小刻みに震えている。唇を離して視線を合わせると同時に、光希は大きくしゃくりあげた。
「光希……」
「ごめん……っ、俺……」
切なげに睫毛を揺らすと、大粒の涙が頬を伝った。
「ごめん……!」
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