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前回と同じく、カウンターから一番近いテーブルに、さらに同じく向かい合わせに座る。――相変わらずカッコいいな、くそ。
「……悪い、そう言えば伝言伝えそこねた」
「それはもういいよ。直接伝えられたし」
「あっそ」
同じ職場という立場が今は心底羨ましい。
「あいつ、最近おかしいんだ。ぼーっとしてミスが増えたし、会議中に急に喋れなくなったり。……きみが何かしたんだろ」
した。しかも泣かせた。でもそれは。
「……俺のせいじゃねえよ、多分」
――あんたのことがまだ好きなせいじゃねえの。それか、あのバーテンダーのせいかもしれないし。
「恋煩いってやつじゃねえの。俺じゃない誰かに対しての」
「……羽根田が恋煩う相手が、きみ以外にいるっていうの?」
「いるんだろ。俺はきっぱりフラれた身ですから」
「フラれた? あいつがきみをフッたってこと?」
だから、そう何度も突きつけないでほしい。耐えられない。
「そうか……」
山崎は顎に手を当てて、考え込んだ。
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