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「もういいか? 俺だって失恋の痛手からまだ立ち直ってないんだからさ。もうそっとしといてくんねえかな」
「――お父さんの話、聞いたよ」
立ち上がりかけた智弥の手が止まった。
「わざわざ有休取って、イギリスくんだりまで。きみのために」
「だから……それは、自分と重ねてって言ってたし。友情の範囲内っていうか……」
「あいつが家族ってものに、どれだけ執着してるか、分かるだろ? きみに幸せになってもらいたい。きみにちゃんと家族を作ってほしい。多分あいつの考えてる家族って――」
父と母、そして子ども。絵に描いたような家族団らん。
「……自分が邪魔になるって思ったんだ、きっと。きみの幸せのために身を引こうって」
テーブルに乗せた拳に力をこめる。
「か……仮にそうだとしても、じゃあ、どうすればいいんだよ、今さら!」
「――きみの覚悟を知りたい」
「え?」
「きみは、あいつを幸せにする覚悟があるのかい――智弥くん」
「……当たり前だろ……っ」
それを聴くと、山崎はにっこり極上の笑みを浮かべた。
「じゃ、これ」
と、スマホを操作して、画面を見せる。
「何これ」
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