3.

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 名刺を確認しつつ、目の前にそびえるビルを見上げる。 「でか……」  本当にあの光希がここで働いているのだろうか。かなりぼんやりしてそうだったが。  ガラス張りのエントランスの正面にある受付カウンターへと向かう。歩くたびに踵の高い黒革のブーツが音をたてる。 「あのー」 「いらっしゃいませ」  受付嬢がにこやかに微笑みかける。智弥の格好を見ても全く動揺しないのは流石だ。 「この人に会いたいんすけど」  両手で受け取った光希の名刺を眺め、少々お待ちくださいませ、とまたにっこり笑みを浮かべた。  手持ち無沙汰になり、広い空間をひととおり眺めて柱のそばにあった一人がけのソファに腰を下ろす。  高い天井を見上げると、冬の西陽がちょうど差し込んできており、サングラス越しにも眩しいくらいだ。    やがてエレベーターホールからこの静寂な空間にふさわしくない、慌ただしい足音が聞こえて来た。と思うとスーツ姿の光希がすごい勢いでエントランスに駆け込んできた。  立ち上がった智弥を見つけると、光希は走ってきた勢いのまま、智弥の腕を掴んでぐいぐい引っ張って行く。 「お、おい……」 「――いいから、こっち」
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