うごいてないね

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「うごいてないね」  数日後、何か服を買おうと店の前でマネキンのコーデを見ている時だった。いつの間にそこにいたのか、店の入り口、というより俺のすぐ隣にその子はいた。 「また会ったね」 「うごいてないね」 そう言って指さしたのはマネキンだ。顔などは書かれていない、簡単な造りのものだ。服も着ているし子供目線には普通に大人に見える、のだろうか。 「これは人じゃないから動かないよ」 「うごかないの?」 「生きてないからね」 「ふうん」 じっとマネキンを見つめ、タタっと走り出してしまう。 あの子、何でそんなに動いていないものに興味があるんだろう。 いや、甥っ子も言葉覚えてきたら「なんで」と「〇〇ってなに?」を常に聞いて来るので、あのくらいの年だと気になったことはつきつめたいのかも。 俺が言ったあとに「ふうん」で終わってるのが気になるけど。納得、してくれてるんだろうか。
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