きっと、いつか。

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見上げると、飯田課長が俺を睨んでいる。 いささか時代遅れの肩パット入りのグレースーツとパンツ姿でベリーショートヘアの大柄な彼女は俺の上司だ。 「私、やっとくから先にお昼行きなさい」 「いや、何言ってんですか、大丈夫ですよ」 課長は俺に一枚の紙を差し出した。 それは休暇申請用紙でそこには既に課長の記名と 判子が押されていた。 「これ出して帰ってね。  明日一日休み出しとくから」 「何言ってるんですか、急に。無理ですよ。  明日もいろいろやることがあるし」 課長は俺の手に用紙を無理やり握らせた。 「山崎君、これは業務命令。  ほら早く、昼食取ってきて」 課長はポンと俺の肩を叩いて、自席へ戻って行く。 「課長っ」 立ち上がろうとしたら、向かいの同僚、 木村が小声で言った。 「甘えた方がいいっすよ。  課長なりの優しさですって、それ」 「は?」 「最近働き過ぎじゃないですか、山崎さん。  ちょっとは休んで下さい」 「……」
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