きっと、いつか。

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「桜木…?」 「お姉ちゃん」 陽菜ちゃんが桜木をそう呼んだから驚いた。 「まさか、ここにいたなんて」 と言って、桜木は俯いている少女を睨んだ。 「どうしてまた逃げ出したりなんかしたの。  心配したんだよ?」 「ごめんなさい」 「…どういうことだ、桜木」 「妹は心臓に持病があって、地元の病院からこっちに移っていて大事な手術を控えているんです。なのに最近、病院からこっそり抜け出す事が多くなって。そのたびに私が呼び出されてしまって。ねぇ、これ以上、私に迷惑かけないでよ」 「…それで最近休むようになってたのか」 桜木は申し訳なさそうに頷く。 「迷惑をかけて本当にごめんなさい」 桜木は俺に向かって深々と頭を下げた。 それを見ていた陽菜が言う。 「悪いのは陽菜だから。  だから、お姉ちゃんを責めないで下さい。  病院には戻るから、お姉ちゃんを許して」 少女は俺に向かって深々と頭を下げた。 「そういう事情があったとは知らなかったよ。  酷い事言ってすまなかったな」 俺も桜木に深々と頭を下げた。 桜木は首を横に振った。 「私の方こそ、ありがとうございました。  妹のモデルになってくれてたんですよね?」
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