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黒き少女
夜の下、建物の屋上、高いフェンスの上、一歩踏み外せば落ちるその場所に、一人の女が立っていた。
冷たい風が流れるように吹き、少女の黒髪を踊らせる。
目を閉じ、眠りから覚めたように、ゆっくりとまた、目を開けた。
暗闇でもわかる血のような深紅の瞳が、夜の明るい東京を写す。汚れのない純白の肌が、より黒髪を映えさせる。
薄らと笑みを浮かべるその姿に、美しいと思わない者はいないだろう。
黒いワンピースの下から覗く真っ白な足が、フェンスから離れると、少女の体が前に、ゆっくりと倒れて行き、漆黒の髪を靡かせる。
そして、その姿は、明るい東京の街に
——消えた。
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