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「どうしてここに?」
「ここの近くで試合があって。立ち寄ったわけ。正門から亜子ちゃんが見えてさ」
「あーなるほどね」
風見は手を払いながら、空気を吸っている。
「なんか…亜子ちゃん、変わった」
風見が改まって私を一瞥する。同じ学科の子がさんざんレクチャーして、最近の化粧とか髪型をするようになった。いも臭かった学生時代とは違うかもね。
「食べ友、出来た?」
「え?」
風見が驚いたように聞き返す。
「やっぱり。亜子ちゃん、誰かに食べ友を譲る気?」
「譲るも何も…こだわってないし」
「まさか、亜子ちゃんは食べ友が出来たの?」
「そりゃ栄養士専攻だから、食べることが好きな人達だし。」
風見はがっくりと項垂れる。
「なんだよ、それ…」
あーあ。本当にいじけたみたい。
「今日は帰ります」
急に敬語で話し始めて、正門に向かう。
「風見。私、引っ越したのって聞いてない?」
遠ざかりながら、返事をする。
「ここの近くでしょ?那奈美ちゃんから聞いたよ」
「なんでも喋るのね、あの子。じゃあね」
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