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「え?」
予想外の言葉に聞き返す。
「なんで?何かあったの」
ちょっと食い気味に聴いてしまう。風見も驚いていたけど。
「俺さ…入院するんだ」
「入院って…」
私と風見の距離が離れる。
風見はゆで卵の半分を口に含んで、咀嚼する。何を言うの?なんで入院するの?
あんた、元気じゃんか。
「癌なんだ」
冷たい隙間風が二人の足をさする。背筋が凍ったのは風だけじゃない。
風見は腹の真ん中あたりを触る。
「ここんとこ。胃ってここだよね。胃だって」
「風見…」
「ん?」
「なんで、今言うの」
喉の奥が痛む。
風見が首をかしげた。そのあとに考えたあと、
「ごめん。俺、馬鹿だから」
と笑った。
いつもより弱々しい笑顔で。
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