ポカリスエット

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ポカリスエット

「ポカリスエットは飲む点滴なんだって」 青いラベルを空に透かす。 大学病院の屋上ベンチで、白石くんと並んで腰掛けている。 「私、風見が退院するまでポカリスエット飲む」 「太るらしいよ」 白石くんが小さく笑う。その笑顔もどこか寂しそうで、胸をしめつける。 風見が入院したのは、修学旅行が終わって代休が入ってからすぐ。 クラスメイトには担任から伝えられ、何も知らなかった友人たちは泣き出したり言葉をなくした。それであてもなく「胃癌」を検索して。 入院して二ヶ月。 こまめにお見舞いに行った。白石くんも、よく一緒に。時々、那奈美も。 風見は今は寝ていた。昨日の夜は体が痛くて眠れなかったという。
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