8人が本棚に入れています
本棚に追加
風見は名役者になれる。
あんなに美味しい顔をしていたのに、だんだん味が薄くなってきていたらしい。
「都筑さん、もう少しいる?」
病室に戻るまでの廊下で白石くんが聞く。白石くんは塾に通っている。そろそろ進路のことも…ね。
「うん。」
「じゃあ、お先に。気をつけて、帰ってね」
「ありがとう。白石くんもね」
白石くんは手を振って、廊下を歩き去っていった。
風見の食べる量は看護師を驚かせた。御飯の量が少なくて、おかわりをお願いしたら 次から丼でご飯が来たそうだ。
「亜子ちゃん、泊まってく?」
風見は冗談を言う。ニコニコしているのは相変わらずだ。
「帰るよ、床で寝させるの?」
「ははは。」
風見はまた笑う。パイプ椅子に座った時、風見は咳払いした。
「…寂しいんだよ」
風見は窓の向こうを見つめて言う。ここからちょうど海が見える。夕日が沈みそうだ。
最初のコメントを投稿しよう!