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「リンパに転移はないって」
良太はよく分かってないみたいで、ただ父親が医者と話していた言葉をいう。
「ステージ2」
指を二本見せる。
一生懸命に説明する良太を、白石くんは頷いて聞く。
早期発見された癌だから、切除を早く行うと。明後日に手術を控えて、風見は車椅子を良太に押されながらベランダに出ていた。
私はなんとなく風見と向き合えなくなっていた。手を払われた時、無責任だけど私の胸にぽっかり穴が空いて 頭に来てしまった。
「良太。あんまり危ない運転するなよ」
白石くんが良太の脇の下をくすぐって、二人でじゃれている。それを風見が楽しそうに見ていて、時々何も言わない私をちらちら見ている。
二人が遠くに行った。
自然と二人きりになって、風見は困ったようにうなじを掻いている。風見の腕にはいつも点滴の針がある。
最近はしっかり食べれなくなった。
私はベンチに腰掛け、足を伸ばしたり曲げたりしている。
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