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「亜子ちゃん…」
隣に車椅子ごと寄せて、風見が呼ぶ。
私の中の意固地が邪魔をして、返事もしないでそっぽを向く。
「………亜子ちゃん、怒ってる?」
「べつに」
「でも…なんか怒ってるよね」
「怒ってないってば!」
つい声を荒げてしまって、自分でも驚く。風見も驚いた顔をしていて、困った顔で笑う。
「ごめん…この前。」
「なんのこと」
わかってるくせにとぼける。こんなことをしたくないのに。
風見は明後日の手術で不安だから、出来るなら
出来るなら、
風見をぎゅっと抱きしめてあげたい。
「亜子ちゃん、無理しなくていいよ。」
「なにそれ。どういう意味」
「…そういう意味」
わかってる。
風見は私のことをわかってる。
飽きれたんだな、きっと。
風見が車椅子の車輪を引くおとが遠くなる。
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