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風見の闘病生活は手術で、和らいだ。
私は受験シーズン真っ只中に入ってしまって、とうとう会いに行くタイミングを失っている。
大学受験が終わって、卒業式まで来て。
風見の名前が呼ばれて、返事がない空いた席を見る。バスケ部のみんなは前日に風見に会いに行って、楽しかったと話している。
「絶対に渡して!」
那奈美やクラスメイトまでもが、声を揃えた。風見の卒業証書の筒を握らされている。
「なんか好きだったんだよな、二人が一緒にいるところ」
「わかるわかる。世界一平和なコンビって感じ」
「また幸せそうに食べてよ。」
「風見には都筑なんだって」
色んな言葉をかけられる。
見ていないようで、みんな見ていたんだね。
正門の前の石垣に腰掛けて、桜を見上げる。私はまだポカリスエットを飲んでいる。
「点滴?」
見上げると、白石くんがいる。にっこり微笑んで、ポカリスエットに指差す。
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