第一話 栞

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第一話 栞

「栞、少しいたずらが過ぎないか? 淳も驚くより怒るんじゃあ……」 「うん。覚悟しといてね」  笑いながらも不安そうなお父さんを見ていると、私は子供に戻っていたずらをしている気分で、少し楽しくなってくる。  今日の結婚式にお父さんがくることを、実は淳にいっていない。バージンロードをお父さんに連れられて歩いて行ったらどうなるか、目に浮かぶよう。  失踪したことにしていたお父さんと淳が会うのは、ほぼ十年振り。イタリアのレストランで働いていたことは、私とお父さんだけの秘密だった。引き締まった身体に渋みを増したお父さんの表情は、娘の目にもかっこいい。 「お父さん、よけちゃダメだからね」 「ん? なに? それより、栞のほうこそ気をつけろよ。ひとりのからだじゃないんだから」  呆れながらも心配そうな父親の視線を向けてくれる。それはお腹に三ヶ月の娘がいるから。まだエコー検査で性別はわからないっていわれたけれど、きっと女の子だ。私にはわかる。私たちの幸せな未来が。 『家族三人の散歩 幼い女の子を挟み つないだ手を大きく振りながら 笑顔が輝く 抜けるような青い空の下』
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