とりあえずパンツ穿け。

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 船体からもぎ離され、宇宙空間に投げ出される。何が起こった?  ぐるぐる回る視界の中、セレニティ4の方に目をやった私の血の気が引いた。  宇宙服からへその緒のように伸びていたテザーが、途中で切れていた。船の一部だったと思われる物体が、高速で遠ざかっていく。  あとからやって来たデブリが船体をかすめ、一部の部品をもぎ取ったついでに、私のテザーを引きちぎったのだ。  状況を理解しようとする間にも、セレニティ4との距離は開いていく。慌てるな。まずは推進装置を使って、姿勢を立て直そう。船に戻らなければ。  だがその時、再びアラームが鳴りだした。全身が鳥肌立つ。  可能性は低い、デブリがに衝突する可能性は……  そう思いながらも、私は宇宙服に包まれた体をできる限り縮めた。  その時、何かがぶつかってきた。痛みと衝撃、死を覚悟して、私は目をつぶった。 「ジェイン、僕だ! 大丈夫か?」  スピーカーから流れる声に驚いて目を開くと、宇宙服を着た海部がそこにいた。私の両腕をつかみ、顔を覗き込んでいる。 「ドクター、宇宙服……」 「初めて着るタイプだから手間取ったよ。テザーを巻き取るから、僕につかまってくれ」  そう言って自身のテザーに伸ばす腕を、思わずつかんだ。 「そうではなく……! ご気分は大丈夫ですか!? こんな気密性の高い服を着て」  彼の着衣への嫌悪感は本物だ。それなのに、こんなものを着ていて大丈夫なのだろうか。 「気密性高くないと、死んじゃうだろ」  海部は苦笑した。 「それに、宇宙服を着るのが嫌さに、この僕が君を見捨てると思ったのか?」 「……」  そうだった。  彼は、人類を救うために全てを投げ出した人なのだ。  数日前の寂しげな表情が頭に浮かび、私は思わず海部にしがみついた。解放を求める彼が今にも宇宙服を脱ぎ捨て、星ぼしの間を飛んで行ってしまいそうな気がした。  だが海部は片腕を私の体に回すと、もう片方の手でテザーを巻き取り始めた。  いつの間にかアラームはやんでいる。どうやらセレニティ4に追加の被害はなかったらしい。ほっとした私は、腕に力をこめた。 「初めて会ったときも、これくらい情熱的に抱きついてくれれば良かったのになあ」  海部が楽しそうに言う。 「あなたが服を着ていれば、そうしました」  私が憎まれ口をたたくと、彼は笑って言った。 「今も、中身は全裸なんだけどね」  それを聞いて、私も思わず吹き出した。
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