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<通話可能>のグリーンランプが点灯する。私は、一つ深呼吸して通話スイッチを押した。
「ノスリ号、ノスリ号。こちらセレニティ4のスキナー少尉です、応答願います」
数秒後、ノイズ音まじりの応答があった。
『やあ少尉。こちら、ノスリ号の海部だ』
「はじめまして、ドクター海部。ジェイン・スキナーと申します。ジェインと呼んでください。あの……お話しできて、非常に光栄です」
『ジェイン。こちらこそありがとう、助かったよ。ここまで来て死ぬわけには行かないからね』
冗談めかした笑い声。船が難破しかけているというのに、剛胆な人だ。
レーダーがノスリ号の信号を捉えた。遭遇まであと5分。
「ドクター、これからドッキングの準備に入ります。衝撃に備えてください」
『わかった』
ノスリ号が視界に入ってきた。200年前には最新型だった宇宙船。
その中には人類の、いや地球の運命を救った英雄が一人。
地球に小惑星が衝突する。200年前、SF映画のような話が現実になった。
映画と違うのは、衝突まで数百年の猶予があったことだ。熟慮の結果、人々はこれまた映画並みの決断を下した。小惑星に爆発物を仕掛け、爆破の衝撃で軌道をずらそうというのだ。その名も『アルマゲドン計画』である。
計画には、当時開発中だった冷凍睡眠技術を使うことになった。訓練された宇宙飛行士を仮死状態にして小惑星まで送り、できるだけ地球から離れた場所で爆破を行う。その後は再び冷凍睡眠で帰還させるのだ。その距離、年月にして片道100年分。往復で二世紀分だ。成功率を最大化するための、苦渋の決断だった。
ところが、計画の最終段階にきて問題が発生した。人間を生きたまま冷凍するための薬品の開発が難航し、できた薬は高確率で致命的な副作用をもたらすことが判明したのだ。当時の宇宙飛行士はエリート職で、絶対数が少なかった。薬に適合する人材が見つかれば奇跡といえた。
その奇跡の人が、海部勲なのである。
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