精霊の里 ~時が止まった町~

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プロローグ 終着駅・・・ なんと哀しくてロマン溢れる駅の名前だろう 現在(いま)の私にぴったりの言葉 3年も一緒にいた彼が突然に出ていった ある日 仕事から帰ると 彼の荷物がなくなっていた 私の帰りを見計らっていたかのようなタイミングで 彼からのラインが! 「ごめん、君との生活に飽きちゃったよ」 ・・・・・ 頭の中は真っ白! 少しの間、私は呆然としてたのだと思う しばらくして 無性に腹が立ってきた 自分で勝手に転がり込んできて 人の心を鷲掴みにして 明かりのある部屋へ帰宅する暖かさを私に与えておいて 二人で出かける楽しさを私に与えておいて ああ、この幸せがずうっと続くのだと私に信じさせて それでポイですか! 哀しみより腹が立つ 彼の荷物なんて洋服くらいしかなかったのに 部屋がとても広く感じる 何もする気が起きない なんにもしたくない 私は ごろりとベッドに横になる しばらくすると 涙が溢れてきて止まらない 涙を拭く気力もない 私はそのまま眠ってしまったのだと思う いつのまにか外が明るくなっていた 無気力さはそのままで 私は仕事に行く用意をする 行きたくないと思う気力さえなかった いつも通りに 機械的に仕事に行く それだけだ 数日経って やっと一人ぼっちだという実感がわいてきた やっと振られたのだという実感がわいてきた そんな実感が湧くたびに涙は溢れて止まらなくなる
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