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「買ってもらって、よかったの」
「誕生日プレゼントなんで」
というか俺好みの服を買っただけだ。
「次、それ着てデートな」
「きも」
真彩はやはり、笑っていた。
「メシ食う?」
時刻はすでに15:28になっていた。
時計もなく、二人ともスマホも持っていないから、時間を確認できたのは久々のロビンソンに入ってからのことだった。遅めの朝食だったこともあって、真彩はそこまで腹が減っているようには見えなかった。
サンドウィッチとミルクティ、アイスコーヒーを注文して一息つく。真彩がその席についているのを見るのは、初めて俺が強引にデートに誘った時以来だった。まじまじと見つめていれば、首を傾げられる。
あの日の真彩は、俺を見ることなく窓の外を見ていた。見つめれば見ないでと言われて、時間の価値が違うとも言われた。感傷的な気分になって、同じように首をかしげてみる。
「え、なに」
「ここ来んの久々だなと思って」
「ああ」
あの日の俺は、トイレに行くと言った真彩がハンカチを取り出したことにさえ驚いていた。
今ではなぜか俺のパンツにも必ず入っている。とことん影響されているらしい自分がおかしかった。
「映画館で寝てたよな」
「ああー、急に、眠くなって」
「かなり待たせたしな」
「それは本当にそう」
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