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深夜の労働まで、あと3時間。
やりたいことは決まっていた。何もかもが情けない一日を、最後に払拭してやりたかった。
俺のどうしようもないプロポーズを思い返したときに少しでもマシな記憶が残っているように。そんなことを考えてから、どうしようにも上手くいかさなそうな予感がして笑ってしまう。
それでも朝佳は、大切にするだろう。
さすがに20時以降にやっている店は少ない。スマホで軽く検索をかけていれば、焦れた朝佳が横から覗き込んでくる。それに「勝手に見んな」と言いながら、特に気にせず店の検索を続ける。“結婚指輪 購入 店”と、検索をかけているのを見ると、朝佳が気の抜けた声をあげた。
「結婚指輪? はい?」
「ハイ? じゃねえだろ」
さすがにこの時間からは難しいか、と苦笑しながら、一つヒットした店のページを開いた。大型雑貨店の中にあるらしいその店はあと30分ほどで閉るらしい。
見た感じは安価なものばかりらしいが、見るだけならいいだろう。決めつけて「ここは?」と聞くと、朝佳は呆れてから「いらないんだけど……」と呟いた。
無視して朝佳の手を引けば、特に抵抗することなく後ろを歩いてくる。
「一生つけるつもりで選べよ」
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