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脅すように言っておきながら、たどり着いたのは、結婚指輪の購入にしては、あまりにも安価な店だったように思う。
どうしようにも格好がつかない。勝手に自嘲している間に店について、閉店間際に滑り込んだ。
ショップがある7階までエレベーターで昇って、店の前に立つ。
すでに店じまいの準備をしかけていた店員に頭を下げれば、呆けた顔が赤く染まったのを見た。
なぜその顔になる。不可思議な反応に怪訝に思いつつも「見て行っていいですか」と声をかければ、もちろんですと返された。
「だってよ、見てみろ」
展示されているものを見遣った朝佳が「別に良いって」ともう一度呟くのをさらに無視した。ペアリングはいくつかあるようだが、やはり想定より安い。
これは出直すことになりそうだと思いながら朝佳を連れ回して、べらべらと横で喋りかけてきている店員に適当な相槌を返した。
素敵な彼氏さんですね、と言われた朝佳が顔を引き攣らせている。それに満足してから「これは?」と声をかければ、朝佳は「いや、ほんとうに大丈夫だから」と拒否してくる。
ここにある中では一番高そうだ。それにしても大した金額ではないから払えないこともない。
「じゃあ、他の店回るか」
「ま……っ、ほんとうに、気にしなくていいから」
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