スーサイドリスト 「非日常のエモーション」

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何一つ難航することなく打ち合わせがまとまって、目の前に置かれているコーヒーを口に付ける。冷え切った液体が、喉をしっとりと潤した。 今日の打ち合わせは、ここまでで良いだろう。 そろそろ2時間が経過することを確認して、広げていた資料をまとめた。 同じようにアイスティを呑んでいた夏目がこちらを見て、声をかけてくる。それに手を止めれば、ちらちらとこちらの手元を見ながら夏目が口を開いた。 「黒木さんって、ご結婚されてるんですね」 何の話か、と一瞬思考が固まって、すぐに思い返す。自分の指に嵌っている指輪について突っ込まれるのが久しぶりで、忘れかけていた。 「ああ、まあ」 「いつご結婚されたんですか?」 「そんなに前ではないですね」 明言を避けてやんわりと伝える。 初日にこの指輪を付けて行った時には、とうとう彼女ができたのかと騒がれまくった。それを彼女ではなく嫁だと訂正すれば、次には冗談よせよと笑われる。 これを何度か繰り返して、ようやく俺が結婚したらしいことが認められた。 思い返しても苦笑いが出る。 「でき婚?」と聞かれることがほとんどで、そのことにいちいち目くじらを立てる気力もない。ただ否定を入れて、訝しげにこちらを見ている同僚を無視することにした。
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