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「はぁ!? 結婚!?」
鼓膜がブチ切れそうなレベルの怒鳴り声に脳幹が揺れる。眉を顰めると、目の前の男は立ち上がって俺の胸ぐらをつかんだ。
「はあ!? 何でお前と!?」
「律、お前落ち着けって」
俺を無遠慮に揺すっている目の前の男、律は、門田の制止に一旦手を止めて、もう一度席に座り直した。
借金を返済して昼のバイトを全うして、ほぼ一睡もせずに門田にアポを取ってみれば、辿り着いたファミレスにはなぜか朝佳の血の繋がらない弟、律が仏頂面で座っていた。
門田が珍しく曖昧に笑っているのを見ると、無理についてこられたことは一目瞭然だ。やはり一度殴られるイベントは必要らしい。そこまで思い当って、もう一度「朝佳と結婚したい。婚姻届に署名してくれ」と言えば、今度も同じように律が立ちあがった。
「あいつはおめえみてえなクソ男とは結婚しねえ」
「いや、もう律子さんにも挨拶に行ってるからね。間宮も結婚するって言ってるから」
「兄ちゃんは黙ってて」
「いやいや黙れないから。見て、そいつ既に誰かに殴られてるから。それ以上傷作ったらマジで間宮にキレられるよ」
「だいたい何だってんだ? そんな傷作ってるってことは他のやつにも反対されてんだろ!?」
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