スーサイドリスト 「非日常のエモーション」

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色々と誤解が生まれているが、反対されていることに違いはない。弁明せずに見つめていれば、なおさら火を点けたようだった。半分思考が働かなくなっている。少し仮眠が必要だから、これが終わってもう一人に署名をもらったら、すぐに帰宅するつもりだった。 「聞いてんのかァ!?」 「律、店の中だからいい加減にしろ、な」 門田が言えば一回一回鎮火するのだが、どうにも俺が気に食わないらしい。殴られても良いし、嫌われたままでもいいのだが、朝佳が大事にしている手前、そういうわけにもいかないだろう。回らない頭の中で決定づけて、一つ、息を吐いた。 「俺の人生をかけて大切にする、苦しいものなら俺が引き受ける、いいモンなら、あいつに全部やる。そのかわり、横であいつのこと眺めてる権利が欲しい。ただそれだけだ」 真剣に言いきって、門田がげっそりしているのを見た。プロポーズのようなものを二度も見せつけられたら、さすがにその顔になるだろう。同じく苦笑しそうになった顔を堪えた。律は俺の言葉に閉口して、じっと黙り込んでいる。それを見ながら門田が婚姻届の証人欄に、迷いなくペンを入れた。 「これでいいか?」 「ああ」 門田と朝佳の関係がどれほど深いのかは俺も知らない。朝佳が施設のために借金をしたことも、こいつは知らないだろう。それでも俺と朝佳の共通の知人だ。
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