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「死神ちゃんと結婚したんだね」
ひどく不気味な男が嘲笑った。こいつが誰なのかわからない。ただ不快な笑い声が、目の前の男の喉元から響いてきている。
「知ってたのか」
「知ってるよ、少なくとも君よりね」
わざと神経を逆なでするような声で笑った男が、目の前のつまみを箸で持ち上げて、口の中に放り込む。その隙に店員がやってきて、当たり前のように慎之介の目の前にウイスキーを置いた。
慎之介はまたへらへらといつも通りに笑って「ありがとー」と呟いている。それも店員が見切れた瞬間に終わる。
「何にびっくりしてるのかなぁ。結婚したって知ってたこと? それとも友達だと思ってた男のキャラが全然違うこと? ああ、それとも自分より、妻のことを知ってるとか言い張る男が出てきたこと? 友達が、好きな女の子の悪いうわさ話を流していること? 全部?」
「シン」
「あれだけ忠告されて、それでも我慢できなかった?」
躾の悪い我が子を見るような目だ。可哀想な子どもを見ているような声で言って、もう一度笑う。
「だから、近づかない方が良いよって言ったのに。呆気ないくらい、シナリオ通りになっちゃったなあ」
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