🎄貴方の為に🎄

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晶は店の外に出ると はあ。と白い息を吐き 手をすりすりと擦った。 クリスマス仕様の街並みは煌びやかで なんだかワクワクしてくる。 クリスマスなんて。 関係無かったからなぁ。 家に居た頃。 兄さんは毎年パーティーがあるからといそいそ 出かけて行き帰って来ず。 使用人も年末は交代で休みになるから 家には 人も少なかったし シンと静まり返ってた。 いつもと同じように部屋に居て。 志乃さんが用意してくれる普段と何も変わらない飯を いつもと同じように無理矢理胃に放り込んで。 小さい頃からずっと。 クリスマスも正月も誕生日も他の日と変わらない。 全てを知ってから 振り返ると志乃さんは敢えて そうしていたのかな。 化け物に 無駄な期待を持たせないように。 現実に期待をさせないように。 誰も化け物を愛したりはしないのだから。と。 あ。化け物って思うと蓮司さんに怒られるんだった。 怪物。 俺は人と違う【才能】を持った怪物。 晶は一人寂しげに笑みを口元に浮かべる。 蓮司さんはそう言ってくれるけど。 でも あの頃の俺は・・。 幼稚園や小学校。 周りは楽しげに家族や友達との予定を話していて。 誰にも理解されず 理解する事も出来ない俺は いつからか 自ら全てをシャットアウトしていた 気がする。 楽しいって何だろう。 予定って何だろう。 何だろうばかりで。 ずっとわからなかったから。 腕時計へと目をやると 約束の時間まであまり 余裕が無い。 この時計は誕生日に蓮司さんから貰った。 生まれて初めての誕生日プレゼント。 すりすりと触り ハッと気づく。 急がないと。 早めに署を出るつもりが引継ぎに時間が かかっちゃったからな。 晶は携帯を取り出してマップアプリを開く。 ここからなら歩いて10分。 よし。 携帯を見ながら足早に歩き出した。
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