🎄貴方の為に🎄

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エンジンをかけ 煙草を咥え火をつける。 助手席で小さくなっている征也へチラッと目を向けた。 まあな。 あれだけ勢い込んで掴んだネタが空振りじゃ 凹むのも分かるが。 「そんなに焦るな。お前は充分にやっているし 成長も見える。一回空振ったからって凹む 必要もない。結果ばかりに執着していると 足元掬われるぞ。」 「はい・・。すいません。」 駐車場から車を出し イルミネーション輝く街並みを 通り過ぎながら 蓮司は煙を吐き出した。 綺麗ですね。と目を輝かせる晶が脳裏に浮かぶ。 「・・ちゃんと礼を言っていなかったが 晶が今のチームを作るのに色々手助けしてくれた そうだな。アイツも感謝していた。」 「え・・いや。そんな・・。こちらこそ葉山には 幾ら礼を言っても足りないくらいです。 アイツと仕事をすると驚かされるといいますか。 俺は視野が狭いんで 勉強になります。」 視野か。 コイツがそこにコンプレックスを持っているのは 見ていてよく分かる。 だがな・・。 「別にいいんじゃねえのか。」 「・・は?」 「だから。視野なんてのは無理して広げるモンじゃ 無い。広いヤツが俯瞰で見て 狭いヤツが深く見る。 それぞれの特徴を生かしながら捜査するのが コンビってモンだ。お前は俺の思考に付いていけない とか 何かと自分との比較対象に俺を出すが そもそもそれが無駄だ。」 キッパリそう言い切ると征也はポカンと口を開け 苦笑いを浮かべた。 「堂上さん。変わりましたね。」 「あ?」 「あ・・いや。今までなら思ってくれてたとしても あまり言われたことは無いんで。アドバイスとか 多分初めてです。どちらかというと黙って ついて来いだったから 考えがわからなくて 途方に暮れる事が多かったといいますか・・。」 「ああ・・。」 今度はこちらが苦笑する番か。 「・・ずっと一人だったからな。独りよがり だったんだろう。相互理解に言葉が必要だと 気づいたのも最近だ。」 「葉山の影響ですかね。」 「ああ。勝手に思考を進めたり 勘違いも多いから 話さないと取り返しがつかなくなる。」 散々痛い目に遭ったからな。 まあ。俺が悪いんだが。 思い出し つい顔を顰めて煙草を灰皿に押しつけた。
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