そのおんな悪妻につき

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   旦那はバツ1であったが、そこにはわたしは気にしなかった。なんせ最高経営責任者。こんな魅力的な肩書はそうざらにはいない。  お金も使いたいだけ使えて、夢が正夢になった感覚である。    その旦那とは、10年が経過するうちに、関係は冷え切っていた。    存立ひしめく競合他社を出し抜くためには、それなりの知恵と人脈が必要になってくる。  それはIT企業でも同じで、最近は接待費を削って経費を浮かせている企業があちこちに見受けられる中で、やはり企業として生き抜くためには人間と人間との結び付きが大事になってくる。そのために旦那と一緒の時間は容赦なく削られる。    それは分かっていた。    そこにお嫁に行くには、旦那の付き合いから生じる孤独も分かっていた。    しかし、多数のその孤独を癒してくれるふたりの間の子供、その肝心な子供をわたしたち夫婦は授からなかった。
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