そのおんな悪妻につき

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            *  わたしは音楽が好きで、歌謡曲からJ―POP,K―POPまで幅が広かった。  旦那は読書が趣味だった。特に安部公房を愛読していた。  「安部公房作品の心理のイロハとストーリーの構築性は、経営の役に立つ」らしい。    休日、わたしがサカナクションの「アルクアラウンド」を、スマフォのまま本体から聴いていると、旦那はうるさいから本が読めないじゃないかと、憤りながら言い放つ。  わたしはこれを聞いて―面倒な奴だなぁー、ホント頭かち割って、脳みそぐちゃぐちゃにして、野ざらしにしてやりたい―となんの感傷もなく思った。 そして、とてもきつく「うるせーなー!」と言い放つと、旦那は黙りこくった。    わたしはその時に強く思った。わたしは旦那にはもう愛情らしい愛情がないことを…。    10年も一緒にいて心が通じ合わない他人が存在できることを…。    言葉ひとつにしても、怒りを覚えることが多くなった。
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